目次
1.コンセプト
2.ブリキのバケツ、すっぴん、シンプルなスタイリング
3.女性好みのやさしい空間インテリア
4.ダイハツ「トコット」とスズキ「ラパン」を比べてみて
(1)エッジが効いている「トコット」に対し四角いんだけどなんとなくまるい「ラパン」
(2)似てるけど違う「トコット」と「ラパン」のインテリア
(3)シンプルを追求した「ラパン」突き抜けた「トコット」
(4)まとめ
「トコット」は「ミラココア」の、女性に人気のある車の後継ラインナップですが、多くのデコレーションで盛ったこれまでの仕様から、肩ひじを張らず自然体で乗れる車へと、大きくコンセプトを変えています。
シンプルさを売り物にした「トコット」はいっそう素っ気なさが新鮮に感じるように強調され、ムダな装飾を省いた四角いスタイルは、若い女性だけでなく老若男女が乗れる、新しいベーシックカーのカタチを造り出している感じがします。
フロントバンパーの微妙な段差も、単純な面構成となるのを防ぎ、「トコット」の表情作りのポイントになっています。
装飾のないフロントはシンプルで、フロントグリルと呼べるものがありませんが、凝った作りのヘッドランプが表情を与え、独自の雰囲気を放ちます。
サイドからみた「トコット」は、オーソドックスな四角いカタチなのですが、僅かに突起したショルダーラインが、車に質感を与えています。また、リアクォーターパネルではラインの流れを変え、ボディに厚みをもたせています。
ルーフに向かい絞り込まれたリアは、台形で安定感のあるカタチをしています。丸形コンビネーションランプの大きさとデザインは、高いレベルでまとめたリアスタイルを作っています。
助手席前のインパネには、セラミックホワイトのガーニッシュが使われ、やわらかなやさしさを生み出します。
1眼タイプの大型メーターは盤面発光タイプで、ホワイトメーターリングが施されているのが目を引きます。
『ミラトコット』のパワステはとても使いやすい。一言で言うならどんぴしゃ。ハンドルをぐるぐる回せて自由自在、駐車がとてもしやすいのがGOOD。
低速では軽いものの、40km/hくらいになるとじわっと重さが出てきて、カーブを曲がるときは安定する、怖いと感じさせないように、うまくまとめていると思います。
ダイハツとスズキの女性に向けた車「トコット」と「ラパン」の比較を行ってみます。
「トコット」は2018年2月で生産を終えた「ミラココア」の、ポジションを埋める車として同年の6月に登場しています。車のベースは「ミライース」をもとに開発が行われており、正式な名称はミラ「トコット」とされ、ミラシリーズを構成する一員です。
「トコット」の開発コンセプトは若い女性とされていますが、これまでの「ミラココア」とは違い、ムダな装飾を省いたシンプルなデザインは、若い女性だけでなく多くの人が乗れるスタイリングを実現させています。
スズキが若い女性に向けた車「ラパン」は、2015年6月に現行の3代目となるモデルが登場しています。3代目のモデルは「可愛いものは好きだけど、子供っぽいものは好きじゃない」との、ターゲットとなる若い女性の意見を反映させ、ナチュラルなシンプルさを求めたデザインとなっています。
「トコット」は全高が高いため、室内の高さも「ラパン」を上回っていますが、長さと幅では「ラパン」が勝っています。
ホイールベースは「ラパン」が長く、トレッドの前は「トコット」後は「ラパン」が広くなっています。車両重量は「ラパン」が軽く、燃費性能も優れています。
エンジンの最高出力は同じですが、「ラパン」が低い回転域で発生させ、トルクは「ラパン」が「トコット」を上回り、発生回転域も低くなっています。
また、初代はアルトをベースとして開発されたため、アルト「ラパン」と呼ばれていましたが、2代目からは「ワゴンR」のプラットフォームを使用したため、アルトの名称がなくなり「ラパン」と呼ばれるようになっています。
エッジを効かせた「トコット」と、角をなくし丸みをもたせた「ラパン」は、スタイリングコンセプトの違いが良く表れています。四角にシンプルに張り出した「トコット」に対して、「ラパン」はまるみのあるボディが、古典的でレトロな雰囲気をより感じさせます。
フロントが箱のように四角いカタチの「トコット」は、ヘッドライトと大きなバンパーに特徴があり、グリルと呼べるものがない顔つきはユーモラスな表情です。
「ラパン」Fリミテッドはグリル中央の大きなガーニッシュがなくなり、上下にメッキが配されるフロントデザインとなっています。格子型のグリルが露出した顔つきは、コンセプトのナチュラルに、より近づいた雰囲気となっています。
「トコット」はショルダーラインとドア中央にラインを2本もち、「ラパン」はショルダーライン1本と、膨らみのある面でサイドを構成しています。両モデルともにウィンド下端は水平なラインで視界を良くし、ドライバーの車両感覚を助けるデザインです。
「トコット」のリアはシンプルにラインを入れるデザインですが、「ラパン」は凹凸をつけ、変化のあるリアスタイルとしています。ルーフへは「トコット」がキツイ角度で立ち上がり、「ラパン」は緩やかに絞り込むデザインとしています。
「ラパン」はリアにトランクをもつようなデザインが、クラシカルでレトロな雰囲気を作り出し、「トコット」はリアクォーターパネルのラインが質感を与え、ボディ後半が退屈なデザインとなるのを防いでいます。
リアウィンドガラスは「トコット」の傾斜が強く、「ラパン」は緩やかにされています。
「トコット」「ラパン」ともに水平基調のインパネです。「ラパン」は木目調のトレイデザインと、助手席前の引き出し式インパネボックスが、家具を思わせる作りです。
1眼の大型メーターは両モデル共通ですが、マルチインフォメーションディスプレイは、「トコット」が大きく見易くなっています。「トコット」にはステアリングスイッチが装備されますが、「ラパン」には設定がありません。
「ラパン」は淡いカラーをインテリアに多く使い、「トコット」より明るさを強調するデザインです。
シートは「トコット」がセパレートタイプ、「ラパン」がベンチタイプを採用しています。「トコット」はインテリアカラーを落ち着いた色でまとめ、シートを淡い明るいカラーとすることでコントラストをつけ、「ラパン」は明るいインテリカラーに、落ち着いたシートカラーとしています。
リアシートは「トコット」「ラパン」ともほぼ同じで、膝周りに余裕はありませんが、なんとか長時間でも座れる広さを確保しています。
「トコット」「ラパン」ともに、若い女性の支持を集めることが大きな目標ですが、「トコット」は「ラパン」より、広い購買層を対象とできるスタイリングです。
「ラパン」も現行の3代目より、ナチュラルでシンプルな路線に変更し、ムダな装飾は影を潜めていますが、「トコット」はさらにそれを進め、シンプルさを極めるデザインです。
実際に対面すると、角を張り出させエッジを効かせた「トコット」は、角のまるみを強調する「ラパン」より大きな車に感じられ、「ラパン」はコンンパクトな印象を与えます。
車に乗り込むと全高の高い「トコット」は、着座位置も高めにされ「ラパン」は少し腰が沈み込むポジションです。このためヘッドスペースの余裕は、両車ともに変わりがないのですが、乗り降りの姿勢の自由度では、背の高い「トコット」が優れています。
シートに収まり見るスピードメーターは、「トコット」「ラパン」ともにホワイト基調で、シンプルに仕上げられています。
また、木目調のトレイや引き出し式のインパネボックスをもつ「ラパン」は、部屋の中に居る感覚を車内に作り出し、女性を強く意識したデザインです。「トコット」はやや女性よりと思える程度の、インテリアデザインで留めています。
走り出すとセパレートタイプの「トコット」のシートは、そこそのホールド性があり体に馴染む感触ですが、「ラパン」のシートは硬さがあり快適さでは劣ります。シートの位置も背の低い女性を想定しているため、低いポジションとするとお尻の奥に体重が集中し、腰にかかる負担が大きくなります。
近年のスズキ車は柔らかいシートを採用し、触感が優しくなっていましたが、「ラパン」のシートの硬さは意外な印象です。
さらに「ラパン」はスズキ車特有の、軽量ボディを活かした発進加速の良さがなく、ドライバビリティも良くありません。走行中にアクセルを戻し踏み込むような場面に遭遇すると、ギクシャクとした動きとなり、スムーズな走行ができません。
「トコット」も発進加速は遅く反応は鈍いのですが、スピードに乗ると軽さが感じられるスマートな走りで、「ラパン」のようなギクシャクとした動きはありません。
走行性能はスズキがダイハツを上回っていると考えていましたが、「ラパン」ではその良さがなく、長時間のドライブは遠慮したくなるほどの仕上がりです。
また、「ラパン」はステアリングセンター付近の反応が曖昧で、フラフラとした直進性が悪い走りは、常に修正が必要とされ安定性に欠けます。「トコット」はステアフィールを改善し、まともな反応を示すようになったことで、操作しても素直で安心感があります。
室内の静粛性は同程度の静かさと煩さで、大きな差はありません。しかし、乗り心地は「トコット」が角の取れたマイルドな振動に抑えているのに対して、「ラパン」は路面からの振動が直接体に伝わり粗さがある乗り心地です。
総合的な性能では「トコット」が、「ラパン」を上回っていますが、「ラパン」のスタイルやインテリアに強く惹かれるなら、「ラパン」を選んでも満足感を得られると思われます。「ラパン」のもつ独特のレトロな雰囲気は、走行性能には左右されない価値観のユーザーを対象としています。
しかし、「ラパン」が女性を意識し過ぎていると感じるなら、「トコット」に試乗してみることをおすすめします。頑張り過ぎず上手い具合に力を抜いた「トコット」は、フツーに肩ひじを張らずに乗れる良さがあり、ホッと一息付ける愛着の湧くスタイルをしています。